「クルーズ」の言葉の起源から、19世紀の造船競争、タイタニックの誕生まで
まずは「クルーズ」という言葉の起源ですが、これはもともと「Crusus(流れ)」というラテン語の言葉がもとになっているという説があります。この言葉が「走るもの」「競争者」などという言葉になり、転じて海上に浮かぶ定期船の周囲を走り回る「クルーザー」という言葉が生まれたそうです。時期としては17〜18世紀頃で、オランダから英国に伝えられたと考えられています。当時は、「クルーザー」という言葉は「海賊」という意味もあったとのこと。
その後、19世紀に入ると、スピードが出る大型客船をつくる造船競争が欧米を中心に始まります。大西洋を最速で横断することができる最も速い客船には、「ブルー・リボン」と呼ばれる世界的に誇れる称号が与えられるという試みが行われていたのです。その時代の流れにのって、大西洋を軽々と横断する馬力と、ラグジュアリーな内装を備え、食事やサービスも一流ホテルを思わせるような豪華客船の概念が生まれ、4万6329総トン、最高速力22ノット、旅客定員2602名という世界最大級の豪華客船「タイタニック」が登場します。これによって、現代まで通じるクルーズ船、豪華客船の基盤が完成します。
数々の豪華客船・クルーズ船の登場と、飛行機の登場による衰退、近年の価値の復興について
豪華客船「タイタニック」の登場によって、大型客船の基盤が完成し、その後は数々の船旅が楽しめる豪華客船・クルーズ船が登場します。日本ではこのときの豪華客船のイメージがクルーズ旅行にたいして定着してしまい、クルーズ旅行=豪華客船の旅で値段も高価であるという誤解が生じていますが、欧米ではカジュアル・プレミアム・ラグジュアリーという価格帯のランクを設けており、低価格で格安クルーズを楽しむこともできれば、しっかりとお金をかけて豪華客船の旅を楽しむことができるように選択の幅をもたせています。
それからというもの、長らく大型客船は大洋を横断する主要な移動手段として人々に愛されてきました。「タイタニック」を超えるような10万トン近い豪華客船・クルーズ船も続々と登場します。しかしながら、1950年代以降のジェットエンジンを備えた航空機製造技術の発達と、ボーイングに代表されるようなジャンボジェット旅客機の台頭により、移動手段としての主役の座を航空機に奪われていくことになります。
その後、長らく下火となりつつあったクルーズ旅行ですが、近年になって再評価を受けるようになってきます。旅客機では移動の時間は短くできるものの、移動中の時間はデッドタイムであり、狭い座席のエコノミークラスでは窮屈で身体の負担もあります。その点、クルーズ旅行は移動そのものが船旅として楽しめるうえに、ゆったりとしたクルーズならではの優雅な時間を過ごすことができるため、旅客機での旅行が一般化された今、改めて需要が増加を始めたのです。
昨今では欧米出身のクルーズ船だけではなく、日本出身のクルーズ船も誕生し、豪華客船として有名な日本最大級の大型客船「飛鳥Ⅱ」などが登場しています。客船の巨大化も著しく、現在最も巨大なクルーズ船はアメリカのクルーズ会社ロイヤル・カリビアンの「オアシス・オブ・ザ・シーズ」で、総トン数225,282トン、全長 361m、幅64.9m、高さ72m、タイタニックの5倍以上の大きさを誇っています。
クルーズ旅行の方法も様々な多様化をみせ、日本発着クルーズのように自国の港から出発して、国内を回る国内クルーズや、海外に向かう海外クルーズなどが生まれました。中には、クルーズ船に乗ることそのものを目的として、飛行機で海外まで移動して海外の港から乗船するフライ&クルーズといった方法も存在します。
現在の日本では、長期の休みが取りにくい人向けに数日〜一週間程度で楽しめるショートクルーズが登場し、外国籍の豪華客船・クルーズ船も続々と日本発着のクルーズ旅行を提供し始めています。クルーズ旅行人口は2016年時点で日本でも過去最多となり、そのリピート率も実に9割という驚異的な満足度をみせ、今後さらにクルーズ旅行人口が増加していくことが予想されます。まだまだ、クルーズ旅行は進化し続けていくことでしょう。
今、日本で高い注目を集めているクルーズ旅行。船旅を体験したことのない方もぜひご検討を
クルーズ旅行の隆盛の歴史と、今後の展望について詳しくみてきましたが、いかがだったでしょうか。クルーズ旅行がこれから、さらに盛り上がりをみせていくことは間違いありません。日本ではクルーズ旅行=豪華客船の旅で値段が高いという先行したイメージがありましたが、外国籍のクルーズ船が日本発着クルーズを始めることにより、価格も一泊10,000円代から楽しめるカジュアルなプランを多数選ぶことができるようになってきています。長期の休みを取れなくても、ショートクルーズであれば数日〜一週間程度で豪華客船の旅の気分を味わうこともできるのです。
まだ、大型客船での船旅の醍醐味を味わったことのない方は、ぜひとも今こそ、クルーズ旅行を旅の選択肢の一つに入れてみていただければと思います。もう一度乗りたくなる、忘れられない海の旅路が、そこには待っています。